Asai-ryo builder Inc.
#Vol,01

ものと語らい
暮らしを慈しむ

  • #古民家リノベ

~はじまり~
いつもの1日をもっと楽しみたい

心を込め生み出されたものたちは、洋の東西を問わず美しく、ときを超え人を魅了する。そんなアンティーク小物や暮らしの道具を集めるのが何より好きなご主人と奥さま。
好きなものに囲まれて、朝起きてから眠りにつくまでの何気ない毎日をもっと楽しみたい、愛する家具や小物にもきちんとした“居場所”を整えたいと思い、お子さまと3人で暮らす自宅をリノベーションすることにした。

~パッシブデザインに惹かれて~
光と風をデザインすることで 快適空間が日常に

当初は、どんなインテリアにするか、集めたものでどう部屋を飾ろうかと語り合っていたお二人。デザイン優先の考えを心地よく覆してくれたのが、浅井良工務店が得意とするパッシブデザインだ。
パッシブデザインとは、機械や設備に頼らず光と風の流れをつくり、高気密・高断熱を実現する設計思想。浅井良工務店は、長年の実績で培ったプランニング力と自社大工の技術力によってそれを具現化している。

それまで暮らしてきた築40年以上の自宅には、変えたいところが多々あったというお二人。ありていに言うなら、冬は冷え込みが厳しく、夏は夏で太陽光が容赦なく照りつける。エアコンも石油ファンヒーターも、奥さまの体質に合わないからできれば使いたくないが、それ以外の選択肢はないと諦めていたそうだ。

ところが、パッシブデザインなら気がかりなことを解決できるという。土地の向きや広さ、周辺環境を変えることのできないリノベーションであっても取り入れることが可能だと知り、話に引き込まれた。いつしかリノベーションのテーマは「デザイン優先」から、「自然の力で快適に過ごせる家」へと移っていた。気密性、断熱性について緻密な計算で得られた数値に納得したご主人と奥さま。リノベーション後、心地よい暮らしの中でパッシブデザインの効果を体感することになる。

高気密・高断熱な住まいは、暖気も冷気も逃さない。部屋全体を暖める効果があると知って薪ストーブを取り入れたが、一度、薪をくべると真冬も1日中暖かい。パッシブデザインのおかげで、シーズン中、薪ストーブの使用頻度が少ないのは想定外だった。その暖かさにも増して、自宅リビングにいながらアウトドア感覚で、ちょっとした非日常が味わえるのも思わぬメリットだった。薪をくべるのは、主にご主人が担当。ぱちぱちと音を立て、不規則にゆらめく炎は何時間でも見ていられる。灰の始末さえもおもしろい。

夏、リビングに差し込む日差しを抑えるため、浅井良工務店は南側の庇を長めに設定した。おかげでエアコンは28度設定で十分、涼しく過ごせているという。「真夏に限れば庇はもう少し長い方がよかったかな」と話すご主人だが、そうすると冬の光が届きにくくなる。パッシブデザインの絶妙な調整によって、夏と冬のバランスを保つ長さが決まった。リビングの真上にある廊下にはスリットが設けられているが、このスリットも、浅井良工務店の設計手腕が発揮された一例だ。冬には暖気が、夏には冷気がスリットを通って1階と2階を移動し、家中をめぐる。空気の自然な循環が起こるから、1年中、ご家族はどこにいても快適でいられる。

~ライフスタイル~
そばにある 幸せの瞬間

リノベーションが暮らし方を変えていくのも、お二人には大きな発見だった。
たとえば、旧邸の駐車スペースは2台分あった。それを1台分にして芝生の庭にするのは問題なかったが、パーゴラの設置を提案されたとき、ご主人は驚いた。塀や垣根のない、オープンな駐車スペースにわざわざ視界を遮るものを設けるのかと。しかし、暮らし始めてみると、パーゴラは庭のアクセントになった。圧迫感ではなく引き締まった印象を受けることに、ご主人は再び驚いた。

和室と洋室を一体化し、広くしつらえたリビング・ダイニング。
庭は、その南側にある。道路からの視線を抑えるため、フェンスも備えることにした。ダイニングテーブルに腰掛けて、ぼんやりと庭を眺めるのはご主人にとって至福のひとときだ。
「庭を見て幸せを感じるようになるなんて。大袈裟なようですが、世界観が変わりました。夏には庭にプールを出して、子どものお友だちも一緒に遊んでいます。外出しない日はカーテンを開け、テーブルを庭に寄せて昼ごはんを食べたり。おにぎりやサンドイッチをつくって、庭でおうちピクニックをするだけで楽しいのは、目線を気にしなくていいからですね」

コンクリートから芝生の庭に変わり、自然を感じる機会も増えた。夏になるとカエルの鳴く声が聴こえる。見たことがない昆虫がアオダモに止まっている。新しくなったわが家に遊びに来てくれたような気がして、ご主人はうれしくなる。あの生き物たちはどこからやってくるのだろう?と思う。冬になると木肌の色が変わる。木の葉っぱだけでなく、幹を見るという楽しみもあるのだと知った。
年が明ければ、早くも春を迎える準備をしている木々や草花の姿が見える。寒さに身を縮めているように見えても、生き物たちは季節の変化を感じ取っているのだと、くつろぎの中でふと気づく。

奥さまは昆虫が苦手で、土、草木というワードからポジティブな印象は持てなかった。けれど、ご主人が庭師さんに相談をして、樹木を植えてはあれこれと世話している。庭の緑が豊かになっていく様子をリビングから何とはなしに見ているうちに、自然の美しさや四季の変化を感じる暮らしに癒されるようになった。リビング・ダイニング以外の奥さまのお気に入りは玄関。帰宅して扉を開けると光が差し込み、オーダーで仕立てた籐の収納家具をやわらかく照らす。その瞬間がたまらなくいい。

~変化も愛おしい~
家族団欒の ひとときを紡ぐ

1階、2階とも、壁はすべてオガファーザーを選んだ。ビニールではなく、紙とおがくずを使った壁素材がオガファーザー。吸放湿の効果があり、体にやさしい。ナチュラルな風合いの壁に日光が当たって反射すると、部屋はやわらかな白に包まれる。下地として扱われることが多い素材だが、質感に惹かれてそのままにしている。
マグネットを使えるよう、壁の一部に鉄粉入りの塗料を自ら塗った。元の色と同じテイストの塗料を探すのは大変だったが、そんな苦労も今は微笑ましい思い出のひとつ。

新しくなったわが家で、幾度かの季節を過ごすうちに、雑貨選びにもちょっとした変化が生まれている。以前は、その場で気に入って買うことが多かったが、最近はこの家に合うかどうか、置くとしたらどのスペースかとイメージしながら選ぶようになった。「コレクト」から「セレクト」へと、楽しみ方が変わったのだ。手に入れた一品を持ち帰って置いておくと、まるで昔からそこにあったかのように馴染んでいる。

リビングの中心に立つ柱は、構造上の理由で残すことになった。ここに奥さまは、キッチンとお揃いのブランドで、少し変わった形のペンダントライトを取り付けた。新築ならば、なかったはずの柱。リノベーションだからこその楽しみもある。
冬の夜はソファをくるりと90度回転させ、薪ストーブを見ながら本を読んだり、お茶を飲んだり。住まい手とともに深みを増す天然木の住まいで、思い思いの家族団欒の時間が流れてゆく。

物件概要

  • 建築種別
    木造2階建て
  • 延床面積
    178.43㎡(53.98坪)
  • 敷地面積
    429.48㎡(129.91坪)
  • 家族構成
    ご夫婦+お子様1人
  • 立地
    和歌山市