『実家リノベ』注意すべきポイントは?
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『子や孫の代まで住み継ぐ』ことが珍しくない欧米の暮らしに比べ、
引き継いだ住宅は売却するか、あるいは建て替えるのがかつての日本では主流
でした。
これには、日本の住宅事情(耐久性のある資産価値の高い家づくりをできる会社が少なかった)
も関係しているのですが、近年の新築価格の高騰や物価・建築・輸送費のコスト上昇
などの事情や、コロナ禍を経てリモートワーク人口が増加したことも重なったため、
田舎移住を希望する人や『新築するより中古住宅をリノベして暮らしたい』と考える人は
徐々に増えています。
今回は、そんな中古リノベの中でも相続した実家をリノベーションして住み継ぐ
『実家リノベ』についてご紹介します。
家族の思い出を残しながら、省コストで理想の住まいが実現できる『実家リノベ』の
魅力を深堀りします。
親から相続した家どうする?
既に同居している人や親の住んでいた家に移住を希望する人がいる一方で、
親から受け継いだ不動産に居住する予定のない方も増えています。
兄弟など複数の相続人がいる場合はどのように分配するのが適切か、など
相続する時になってはじめて相続不動産について考えるという方も
少なくないのではないでしょうか。
ご自身のライフスタイルや理想の将来の住まい方をできるだけ具体的にイメージし、
どのように処分・活用することが適切か、できれば親御さんがご健在のうちから
話し合っておけることが理想的でしょう。
以下は相続不動産の主な処分・運用方法です。
- 売却する
- 親の死後、その宅地に居住予定のない方が選択される最もポピュラーな不動産の処分方法です。
ご兄弟など複数の相続人がいらっしゃる場合、「換価分割」といって、売却代金を相続人で
均等に分割することができるので、不動産相続の有利不利で不満を抱えるリスクも少なくなるでしょう。
ただし、不動産の売却価格は時価に左右されやすく、希望通りの相続額を受け取ることが
できない場合があります。
また、「換価分割」した場合、相続人全員に譲渡所得税や住民税の支払いが生じる場合がありますので、
注意が必要です。
- 賃貸に出す
- 親の死後に当該住居に居住予定のない方が選択される不動産運用方法のひとつです。
居住していなくても維持費はかかりますし、家を放置しておけば家屋の状態が
悪くなります。
さらに空き家のままにしておくと特定空家に指定され、
固定資産税が最大で6倍になるケースもあります。
賃貸物件にしておくことで、家賃収入が得られ、建物の管理や劣化の心配もクリアできます。
ただし、借り手がつかない場合、その間も税金はかかり続け、修繕費などの維持費も必要です。
- 建替える
- 空き家を解体し、建て替える選択です。
自分の好みに合わせ建築できるので、理想の暮らしがかなう点がメリットです。
デメリットは、最も費用がかかる点です。解体費用に加え、新築費用が必要となりますし、
固定資産税額も相続時の税額よりもアップします。
- リノベーションする
- 理想の間取りやデザインにしたいが、費用を抑えたいという場合にメリットの大きな選択肢です。
リフォームやリノベーションであれば固定資産税も相続時から変動することはありません。
ただし相続人が複数いる場合は、遺産分割協議で相続人全員合意の下、不動産の相続を受けることが必要です。
相続関係の手続きや注意点については、改めて別のコラムでご紹介していきます!
実家リノベのメリット3選
実家リノベを選択された方のご意見をお聞きすると、
「建て替えを選ばずリノベーションして良かった」と回答される方が大半です。
そんな実家リノベーションの主なメリットを5つご紹介します。
1.建て替えるより持ち出し費用が少ない
実家を解体せずに元の建物を生かしてリノベーション・リフォームすれば、
費用を最少限に抑えることができます。
リノベーション/リフォームにかかる費用は工事の範囲や規模により異なりますが、
間取りごと改修するフルリノベの場合、マンションで約15〜20万円/㎡、
戸建てで約20〜25万円/㎡ほどが相場目安といわれています。
また、水回りや外壁の修繕のみなどの部分的なリフォームを選択される場合は、
さらに費用を大幅に抑えながら住み心地をベースアップすることができます。
2.補助金や減税制度が活用できる
■使える補助金
リノベーションで改修する内容が、国や地方自治体が発表している住宅に関わる補助金制度や
助成制度の一定の条件に当てはまる場合、これらの補助金を活用しリノベーション負担を
減らすことができます。
補助金の受給にあたっては、着工前の許可申請が必要であったり、
予算限度額が設定されていたりするなど、制度により異なった要件がありますので、
実家リノベを決断したら、早めに活用できる制度について確認しましょう。
■減税
耐震改修やバリアフリー化、省エネ化、多世帯同居化、長期優良住宅化、その他該当する
一部の増改築にかかわる工事を実施する場合には、減税制度の対象となるケースがあります。
該当のリフォームを実施し、確定申告を行うことで「所得税」もしくは「住宅ローン
(リフォームローン)残高」の一部を控除されます。
また、これらの制度は「減税(税金控除)を受ける対象者本人が居住していること」が条件です。
ご自身が住む予定のないご実家(親世帯のみが暮らすなど)をリフォームされる際には、
対象外になる可能性があることも考慮しましょう。
また、補助金や減税制度については、年度ごとに要件が変更されることがあります
ので、
この点にも注意が必要です。
3.住み慣れた土地で暮らす
顔見知りの人も多く、慣れたコミュニティで過ごせるとストレスも少ないですよね。
永く過ごした土地で安心して新生活がスタートできますし、実家の解体に寂しさや
抵抗感のある方も実家リノベなら残したい部分を残しながらライフスタイルに合わせて
より快適な住まいへと、暮らしを刷新できます。
気をつけたい5つのこと
魅力いっぱいの実家リノベですが、注意すべきことはどのようなことでしょうか。
1.建物の劣化状況をチェック
実家リノベが選ばれている理由として、建て替えるより省コストである点を挙げましたが、
たとえば柱や梁が腐食していたり、建具に深い亀裂が入っていたり、あるいは耐震性能が著しく
低いなど、根本的な修繕工事が必要な場合は注意が必要です。
補強範囲が広がると費用がかさみ、建て替えと同等のコストを要したり、
かえって高くつく場合もあります。そのような場合、建て替えを検討することも必要です。
築年数の深い建物のリノベーションを検討される際は、住宅診断のプロに
ホームインスペクション(住宅診断)を依頼しましょう。
どの程度のリノベーションが必要か知ることができますよ。
2.所有名義に注意
不動産の名義が誰であるか、にも注意が必要です。
たとえば両親がご健在で、二世帯同居を想定した実家リノベーションを行う場合、
不動産は親名義だけれど、リフォーム費用は子どもたちが負担するというケースも
少なくないでしょう。
しかし、たとえ一緒に住むことがわかっている場合でも、第三者が資金を提供したと
みなされるため、名義人に対して贈与税が発生します。
このあたりのことも十分に検討して、また、相続税対策のためにも生前相続を
希望されるのであれば、早い段階から着手されることをおすすめします。
3.耐震性
実家のリノベに際して最も心配なのが耐震性能です。
新耐震基準では震度6強~7の揺れで倒壊しない程度の強度と設計基準で定められています。
しかし、昭和56年以前の住宅は、旧耐震基準で建てられた家が多く、
近年起こっている地震の規模を考えると、倒壊するおそれが高いといえます。
実家の耐震性能を確認されたい方は、耐震診断を受けてみてください。
条件はありますが、診断費用を助成している自治体もあります。
当社でもご相談をお受けしておりますので、お気軽におたずねください。
4.健康面に配慮した断熱対策
我が国は「断熱後進国」といわれるほど、世界的に見ても住宅性能の低い国です。
夏は蒸し暑く、冬は冷気が満ちて寒いのが特徴といえます。
たとえば冬の場合、暖房が効いた暖かい部屋から廊下に出た時、
とても寒く感じたという経験はありませんか。
さらに家の中で起きる健康事故が最も多いといわれるのが浴室です。
寒い脱衣所で裸になり、裸のまま寒い浴室に入り、熱い湯船に浸かり、そこから再び
寒い脱衣所で着衣する。この一連の動作の中で体感温度が急激に上下します。
この温度変化が体に大きな負担をかけ、心臓や血管にかかわる病気リスクを高めるのです。
このような健康被害を「ヒートショック」と呼びます。
また、家の中にいても寒さを感じる恒常的な環境が、風邪やインフルエンザの悪化を助長する
リスクもあります。このような健康リスクを回避するには、家の断熱気密性能を上げることが
効果的です。
5.将来のライフスタイルを考える
「子どもが生まれる」、「ゆくゆく二世帯住まいになる」など、近い将来起こりうる
暮らしの変化については、十分考慮してリノベーションすると良いでしょう。
たとえば子供部屋の間仕切り壁を設置・取り外ししたいしたい場合や、二世帯同居で
寝室を別々に設けたい場合は、その計画を間取りに反映させる必要があります。
また、高齢者・車椅子ユーザーの家族と同居する場合は、バリアフリーを検討するのも
重要ですね。
段差のないフロアやスロープ、手すりの設置、浴槽の入り口を低くする、車椅子で入れる
玄関周りの工事などの改修を行うことで、安心して日常生活を送れるようになるでしょう。
『実家リノベ』は計画的に!
思い入れのある住まいを活かしながら、快適性・安全性を向上できる
「実家リノベ」について今回はご紹介しました。
想像よりもはるかに間取りや設備を自由に選んで決められるので、
出産や介護、多世帯同居など、ライフスタイルの変化に合わせた住まいを考えるときにも、
建替えや新築より費用が抑えられ、非常にメリットの大きい選択肢です。
さらに減税制度や補助金制度を上手に活用すれば、さらにコストを抑えることもできます。
注意点を頭の片隅に置き、準備をしておくことで、気持ちに余裕も生まれるはずです。
将来的な実家のリノベーションもご検討されているなら、まずは住宅のインスペクションから
実施してみましょう。
専門家の診断を確認した上で、リノベーションor建替えなどの判断をされると良いでしょう。