社長ブログ、再開します。
10年前の設計を、10年後に答え合わせする
こんにちは。
浅井良工務店の代表、中口勝之です。
気がつけば、前回のブログ更新から
ずいぶん時間が経ってしまいました。
代表に就任してからは、
建築だけでなく、社員や職人、
会社のこれからについて考える時間が増え、
ブログからも遠ざかっていました。
でも、家づくりへの考え方や
日々感じたことは、
やはり自分の言葉で伝えていきたい。
そんな思いから、
久しぶりにブログを再開します。
性能や設計、現場のこと、
ときには建築とは関係のない話も
書いていこうと思います。
更新頻度を宣言すると、
また途絶えそうなので
宣言は…やめておきます。
再開第1回は、わが家で行われた
住宅の室内環境調査のお話です。

なぜ、HEAT20がわが家に?
昨年、わが家に
HEAT20の設立から関わってこられた
岩前篤先生(当時・近畿大学教授)と、
HEAT20で住まい方実態調査を
担当されている溝口さんが、
学生さんや取材スタッフの方々と一緒に
お越しになりました。
岩前先生は、住宅の断熱性能と
住む人の健康との関係を
大規模な調査で研究してこられた方。
溝口さんは、住宅の省エネ計算や
環境設計を専門にされています。

岩前教授(右)と溝口氏(左)
HEAT20は、日本の住宅の
断熱性能向上を目指して
専門家が立ち上げた団体です。
「G1・G2・G3」という
断熱性能の指標を
聞いたことがある方も
いるかもしれません。
今回、築10年を迎えたわが家が
調査対象となりました。
なぜ、わが家なのか。
わが家は、浅井良工務店が
普段行っている家づくりを、
自分の家でも実践したものです。
高断熱・高気密を土台に、
太陽の光や熱、自然の風を生かし、
少ないエネルギーで快適に暮らす
「パッシブデザイン」を取り入れています。

こうした設計が、
実際の暮らしの中で
室内環境や省エネルギー性に
どうつながっているのか。
その実態を調べるため、
今回の調査に協力することになりました。
夏・秋・冬の実測と、
住まい手へのヒアリング
調査では、リビング・寝室・
脱衣室の3か所に温湿度計を設置。
夏・秋・冬それぞれの室内環境を測定し、
あわせて1年分の電気使用量も
提供しました。
もう一つ興味深かったのが、
私たち夫婦へのヒアリングです。
「夏はどのように過ごしていますか?」
「冬の暖房は何度くらいに
設定していますか?」
「日差しを遮る工夫はありますか?」
わが家は高気密・高断熱の建物に
全館空調を採用していますが、
季節によっては窓を開けて
風を取り入れたり、
日差しを遮ったりしています。
同じ性能の住宅でも、
暮らし方によって
室内環境やエネルギー消費量は
変わります。
建物の性能値だけでなく、
実際の暮らし方まで調べる。
そこに今回の調査の面白さを感じました。
ちなみに、
調査の日はまだ暑さの残る時期でしたが、
玄関から入ってしばらくした岩前先生が、
「本当に居心地の良い空間ですね」
と言ってくださいました。
住宅の室内環境と健康を
長年研究してこられた方に
そう感じていただけたのは、
設計した本人として
正直うれしい一言でした。
では、その「居心地」は
数字ではどう表れているのか。
結果が届きました。
先日、調査結果が届きました。
自分でも面白いと思った数字を
いくつか紹介します。
夏。外は35℃、家の中は25〜27℃
わが家の冷房は、
ウォークインクローゼットの
天井に設置したエアコン1台。
26℃設定で連続運転し、
各部屋にダクトで空気を送っています。
8月の測定では、
外気温が35℃を超えた日も、
リビング・寝室・脱衣室は
おおむね25〜27℃を維持していました。

※調査結果より
26℃と聞くと「それで涼しいの?」と
思われるかもしれません。
涼しいです。
理由の一つは湿度。
室内はおおむね40%以下に保たれ、
空気がさらっとしています。
もう一つは、壁や天井の表面温度です。
人が感じる暑さは室温だけでなく、
周囲の表面温度にも左右されます。
断熱性能を高めることには、
こうした面でも意味があります。
家のどこに行っても温度差が小さく、
脱衣室だけ蒸し暑いということもない。
10年暮らすと当たり前になっていましたが、
グラフを見て改めて実感しました。
冬。加湿器なしで湿度40%以上
冬も同じエアコン1台を
20℃設定で連続運転していますが、
実際の室温はおおむね22〜24℃。
昼間は日射による暖かさも得られています。
高気密・高断熱の家は乾燥する、
とよく言われます。
わが家では加湿器を使っていませんが、
家族が在宅する夕方から朝の時間帯は、
湿度40%以上が保たれていました。

※調査結果より
ただ、数年前に自分たちで測ったときは
50%前後。以前より少し下がっています。
家にいる人数が減ったことも
関係しているのかなと思います。
呼吸や料理、お風呂など、
暮らしの中で発生する水分も
湿度に影響します。
これも
「暮らしが変わると数字も変わる」
の一つです。
電気。冷暖房は年間の約3分の1
「全館空調をつけっぱなしで、
電気代は大丈夫なんですか?」
お客様からよくいただく質問です。
例年、わが家で計っているデータを見ると、
暖房が16%、冷房が7%、
年間電気代の23〜24%の割合です。
残りは、家電や照明、給湯などを含む
日常的な電力使用分です。
全館空調で家全体の温度を整えながら、
冷暖房に使われるエネルギーは
約4分の1以下に収まっている。
10年前に目指した、
少ないエネルギーで
快適に暮らす
という設計の考え方を、
数字からも振り返ることができました。
10年暮らして、
初めて気づくこともある
一方、ヒアリングを通じて
考えさせられたこともありました。
中庭の日射を遮るために使ってきた
大きなタープのことです。

夏の強い日差しを遮るため、
毎年役立っていましたが、
例年タープを張るのを担当していた
長男と次男が進学のために家を出たことで
今年は張るタイミングを逃して、
そのまま夏を迎えてしまいました。
すると、やはり例年と
空調への負荷や
過ごしやすさの違いを実感。
改めて日射を遮ることの
大切さを感じるとともに、
来年からは三男に
引き継いでもらおうと思いました。
10年前も将来の暮らしは
考えて設計しましたが、
実際に暮らしてみなければ
わからないことがあります。
性能の高い家をつくることと、
その性能を永く、
無理なく生かしていけること。
似ているようで、少し違う話です。
家族の人数も年齢も、
暮らし方も変わっていく。
その変化まで考えた設計の大切さを、
改めて感じました。
家づくりの答えは、
完成した日に出るわけではない
家づくりの本当の評価は、
お引き渡し後の暮らしの中で
少しずつ見えてくるものだと思っています。
実は、室温や湿度の測定は、
わが家でもお客様の家でも
以前からおこなってきました。
定期点検では数字を一緒に見ながら、
エアコンや窓の使い方なども
アドバイスしています。
ただ、今回はHEAT20という
第三者による調査です。
どんな結果になるのか、
設計した本人として純粋に楽しみでした。
結果から見えてきたのは、
狙いどおりだったこともあれば、
考え直すべきこともあるということ。
岩前先生が玄関で口にされた
「居心地が良い」という一言の中身も、
数字で確かめることができました。

性能の高い家は、建てて終わりではなく、
住みながらその良さを生かしていくもの。
自分の家で改めてそう感じました。
これからも、こうした経験や
日々感じたことを
少しずつ書き残していきます。
久しぶりの代表ブログですが、
ぼちぼちお付き合いいただけると
うれしいです。
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